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2011年6月15日 (水)

ランドセルはいずこに?

わちきのランドセルはいずこ?
恐れ多くもカノ御方はわちきのランドセルを抱いてお隠れになりやんした。
あぁ、殺生な、このムネの高まりをご存知なクセに。
ランドセルを肩に、通い慣れた家路をゆく道すがら、貴方な駆け馬のようにわちきの前に現れたものよ。
飛び抜けたその柵を、トントンと指で叩いては、わちきの視線をそっちに集中させたかと思ふと、途端に翻るようにわちきの横を摺り抜け背に回ったかに見えたその刹那、わちきの肩越しからスルリとランドセルが滑り落ちて、ふわぁっとセナカが軽くなったんのをいまでも憶えておりんす。
屹度、君はアタイのことが好きだったに違いない、そんな風に思い直してみたのんはすでに拾年も過ぎてからのことでありんす。ランドセルのその後は、果たして百米ほど先に歩いた先にテイネイに道端に置かれていたものの、未だ幼かったアタイですから、そのランドセルを見て腹が立って仕方なかったのはそのとおりでありんす。
追憶からゲンジツへと引き戻されて我に還ると、おやま、貴方は庭の片隅でナニやら蹲っていて、「なにを?」と尋ねるアタイを見るともなしに、「こおろぎだ」とだけ応える。極めつけの日常にふっと胸を撫で下ろしてあと、お茶を入れに行く途中に見た昔の写真が目に入って、当時から少しだけ経った或る日の写真、わちきはランドセルを背負ってうっすらと笑みをこぼして…、宙を見るその眼は彼を追いかけていた。

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